
三重県四日市市
2024年4月、四日市市教育委員会はICT活用の方針である「四可一(よっかいち)」をスタートさせました。「四可一」とは「四つのシステムで」「可視化して」「一人ひとりを支援する」の頭文字を取ったもので、多角的に子ども一人ひとりの姿や課題を把握し、さらにきめ細やかな教育を推進する取り組みです。
その中の一つが、「スクールライフノートで子どもの気持ちを可視化する」というものでした。
教員数が減少する状況下においても子どもたち一人ひとりをきちんと見取っていくために、ICTを活用することにしたのです。
「スクールライフノート」には、子どもたちが今の自分の気持ちを天気にたとえて入力する「心の天気」という機能があります。これを活用し、子どもたちの気持ちの変化や困りごとを把握できないかと考えました。
「はれ」「くもり」「あめ」「かみなり」から今の気持ちに最も近いものを選んで入力
「心の天気」は、先生方が子どもたちの様子を把握するという目的だけでなく、子どもたち自身が自分の気持ちを知る(=メタ認知する)ためのものでもあると認識しています。
学校によっては「心の天気に雨や雷を入力したときは、どんな気持ちかコメントも入れるようにしてね」と指導しているところもあるようです。子どもたちが自身の感情を見つめ、言語化する練習にもなると思います。
やはり「心の天気」が決め手になりました。
ICTを活用して「子どもの気持ちを可視化する」というのが「四可一」の方針としても掲げていたことです。
これまで「心の天気」のような取り組みを紙で実施している学校もありましたが、子どもたちにプリントに書き込んでもらい、それを回収し、コメントして返却するとなると、子どもの声をもとにコミュニケーションを取る一連の流れにそれなりの時間・労力を要していました。
「スクールライフノート」で子どもたちの入力内容をシームレスに把握し、そのまま先生からコメント・スタンプでのリアクションも可能になりました。こうした手軽なやりとりは紙では実現できない良さであり、導入にあたって期待したポイントの一つです。
また、時間の面だけではなく学校経営にもプラスの効果があると見込んでいました。従来の紙でのやりとりとは違い、システム上で「心の天気」が記録されることで、学級担任だけでなく管理職や養護教諭なども含めた学校全体で子どもたちの心の様子を見守れるようになるのも魅力です。
すでに「スクールライフノート」の活用が進んでいる他自治体に視察に行かせていただき、現場の様子を見ながら運用について質問できたことも、導入後の活用イメージがわくきっかけになりました。
愛知県瀬戸市の「スクールライフノート」活用の様子を見学
先生方が子どもたちの様子を知るのに役立っています。担任の先生はもちろん、担任以外の先生であっても、「心の天気」の情報を参考に、より子ども一人ひとりに寄り添った対応ができたという話も聞きます。
コミュニケーションのきっかけとしても機能しています。「スクールライフノート」では「心の天気」と一緒にコメントも入力できるので、天気は「はれ」でもコメントで気持ちや悩みを伝えてくれる子どももいるようです。心の天気やコメントをもとに子どもの気持ちに寄り添って話をする機会が増えたという声もあります。
四日市市内では「スクールライフノート」内の時間割機能を利用している学校もあり、お休みだった児童生徒にもその日の授業内容や翌日の持ちもの、宿題などを伝えることができるので便利です。
▼「スクールライフノート」の時間割機能活用イメージ。持ちものや宿題、関連リンクなどをまとめることができ、学びのプラットフォームとして活用できます。
また、四日市市教育委員会では子どもたちのSOSや不登校傾向をキャッチできないかと、登校サポートセンターで研究を進めています。
児童生徒が入力した「心の天気」をグラフ化し、その振幅に着目して情動を読み取るという試みをしているところです。振幅が安定している子どもと比較すると、振幅が大きい子どもの方が、トラブルを抱えていたり、不登校傾向にあったりすることが徐々に分かってきました。
今後はトラブルや不登校傾向の早期把握にさらに寄与できるよう、研究を進めるとともに、その成果をEDUCOMの製品開発にも役立ててもらい、四日市市に限らず全国の学校現場に還元されるようにしていきたいと考えています。
三重県四日市市
三重県四日市市
愛知県瀬戸市
愛知県瀬戸市